親しげな人 [Suddenly,Tendon!!]
こんなことがありました。
コンビニに行こうと外に出たとき、家のそばの横断歩道の直前で、横から来た(あるいはわたしを追い越したのかもしれません)自転車に乗った女がわたしの前に斜めに停まりました。
信号は赤で、一緒の信号待ちになったのですが、彼女がちょうどわたしを遮るかのような位置にいたことが少し気になりました。
わたしは考え事をしていて、彼女を見ることもなく、「ちょっと勢いづいてる休日の女子高生か何か」なんだろうと思いました。
ちょっとした反抗心や気分の高揚みたいなものが、ときに周囲との距離感を狂わせることがあってもおかしくはありません。
信号が変わり歩き始めると、彼女はのろのろ走り始め、なんだかぐらぐらしているので危ないなあと思いながら、彼女を追い越して渡った角を曲がりました。
するとすぐに彼女も曲がったらしく、斜め後ろに自転車の気配を感じました。
そして彼女は後ろからわたしに、
「……なの?」
と、小さな声で何かきいたように思えましたが、気のせいに違いないので、そのまま歩き続けました。
するとすぐに彼女はわたしの横にぴったりと並んだので、ちょっと歩みを遅くしたら、彼女もゆっくりになって、越していくこともありません。
そして彼女は、こっちを見るような感じで、独り言を始めました。
彼女の声は小さく、文章につながりもないのですが、誰かと会話するときの感じでなんだか楽しそうでした。
はたから見れば、わたしと彼女が親しげに会話をしているようにも見えたことでしょう。
このような人にどのように対応してよいのか分からず、反応を見せずに目線だけで彼女のほうを見ると、彼女はピンク色の柄の手袋をしていました。
そしてわたしが思い切り歩みを緩め立ち止まると、先に進んだ彼女も停まって、わたしを待ちました。
わたしはちょっと困りました。
彼女は斜めの横顔で明らかにわたしを待っており、おそらく最近パーマをかけたばかりであろう、まだしっかりしている髪のウェーブが、二十歳そこそこの若い娘であると感じさせました。
ただ、彼女をはっきりと見ることはありませんでしたので、顔を覚えることもなく、確か帽子をかぶっていたように思えますが、それさえ定かではありません。
結局わたしと彼女は並んで歩き、コンビニに到着してわたしが買い物をしている間に、彼女はどこかにいなくなりました。
わたしはほっとしました。
ときどき電車の中などで、誰もいないのに誰かに怒鳴っている人を見かけます。そのような人の頭の中がどんな状況なのかは、知識としてほんの少しだけ理解しているつもりです。
しかし、今回の彼女の状態について、わたしは想像がつきません。
本当は人間として、もしベストな対応があるのであればすべきであって、それを知らないのは歯がゆい感じがします。内心、無視するほど「怖かった」とは言え…。
しかし、すぐに、困惑とともにこの出来事のことは忘れました。
コンビニに行こうと外に出たとき、家のそばの横断歩道の直前で、横から来た(あるいはわたしを追い越したのかもしれません)自転車に乗った女がわたしの前に斜めに停まりました。
信号は赤で、一緒の信号待ちになったのですが、彼女がちょうどわたしを遮るかのような位置にいたことが少し気になりました。
わたしは考え事をしていて、彼女を見ることもなく、「ちょっと勢いづいてる休日の女子高生か何か」なんだろうと思いました。
ちょっとした反抗心や気分の高揚みたいなものが、ときに周囲との距離感を狂わせることがあってもおかしくはありません。
信号が変わり歩き始めると、彼女はのろのろ走り始め、なんだかぐらぐらしているので危ないなあと思いながら、彼女を追い越して渡った角を曲がりました。
するとすぐに彼女も曲がったらしく、斜め後ろに自転車の気配を感じました。
そして彼女は後ろからわたしに、
「……なの?」
と、小さな声で何かきいたように思えましたが、気のせいに違いないので、そのまま歩き続けました。
するとすぐに彼女はわたしの横にぴったりと並んだので、ちょっと歩みを遅くしたら、彼女もゆっくりになって、越していくこともありません。
そして彼女は、こっちを見るような感じで、独り言を始めました。
彼女の声は小さく、文章につながりもないのですが、誰かと会話するときの感じでなんだか楽しそうでした。
はたから見れば、わたしと彼女が親しげに会話をしているようにも見えたことでしょう。
このような人にどのように対応してよいのか分からず、反応を見せずに目線だけで彼女のほうを見ると、彼女はピンク色の柄の手袋をしていました。
そしてわたしが思い切り歩みを緩め立ち止まると、先に進んだ彼女も停まって、わたしを待ちました。
わたしはちょっと困りました。
彼女は斜めの横顔で明らかにわたしを待っており、おそらく最近パーマをかけたばかりであろう、まだしっかりしている髪のウェーブが、二十歳そこそこの若い娘であると感じさせました。
ただ、彼女をはっきりと見ることはありませんでしたので、顔を覚えることもなく、確か帽子をかぶっていたように思えますが、それさえ定かではありません。
結局わたしと彼女は並んで歩き、コンビニに到着してわたしが買い物をしている間に、彼女はどこかにいなくなりました。
わたしはほっとしました。
ときどき電車の中などで、誰もいないのに誰かに怒鳴っている人を見かけます。そのような人の頭の中がどんな状況なのかは、知識としてほんの少しだけ理解しているつもりです。
しかし、今回の彼女の状態について、わたしは想像がつきません。
本当は人間として、もしベストな対応があるのであればすべきであって、それを知らないのは歯がゆい感じがします。内心、無視するほど「怖かった」とは言え…。
しかし、すぐに、困惑とともにこの出来事のことは忘れました。