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ホテルに到着  [WDS第一章-3]

 大統領とパンティーンを乗せた夜のタクシーはすいすい進み、ついに目的地に到着しました。
 と言っても、また二人は車の中で寝ていましたので、最初と最後だけすいすいだったのかもしれませんが。

 さて、タクシーを降りると、何か変です。
 目の前にホテルは無いのです。

  おかしいなあ。
  有名なホテルって聞いてたから、運転手が間違うわけないんだけど。

 とまどう大統領。
 するとパンティーンが、

「マーライアンだ!」

 とうれしそうな声を上げました。
 二人はなぜかマリオッツ・ホテルではなくて、またマーライアンの所に来てしまったようです。

 パンティーンはライティングされたマーライアンのほうへと歩いていきます。
 それを追いかけながら、大統領は、

  マリオッツ・ホテルがマーライアン・パークに聞こえたんだな

 と結論付けました。
 しかし、夜も口から水を吹いているこの変な動物に、パンティーンがとてもお慶びなので、まあいいかと思いました。

 辺りには、観光客らしき人たちが昼と同じぐらいいました。
 パンティーンは、椅子のように作られた石の上に、旅行用具を入れてきた風呂敷を置きました。

 すると、風呂敷の結び目がほどけて……。

(このとき大統領は彼女のそばで「マリオッツ! マリアッツ!」と発音の練習を念入りにしていました)




登場するホテルやマーライアンは、似たような名前のアジアのホテル・名所と全く無関係です。
このお話のいちばん最初のページ
http://hitsujimirai.blog.so-net.ne.jp/2009-10-15-1


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ほどけた風呂敷  [WDS第一章-3]

 風呂敷の結び目がはらりとほどけて、かわいい赤ちゃんが顔を出しました。

「赤ちゃんパンダの実物大ぬいぐるみだ!」

 パンティーンが顔をほころばせて声を上げました。
 大統領も、英語の学習をやめて、

「わあ! パンダの赤ちゃんだ! パンダのパンティーンだ!」

 と言って目を輝かせました。そして、

「どうしてこんなところから、こんなかわいい赤ちゃんが」

 とぶつぶつ言いながら、この愛くるしいパンダの赤ちゃんを抱き上げました。

 大統領とパンティーンは、交互に赤ちゃんを胸に抱きました。
 赤ちゃんパンダの縫いぐるみは、目がくりっとしていて、まるで生きているかのようでした。
 そして、抱かれる姿は、とてもうれしそうに見えました。

「園長が大統領にくれたんだ!」

 とパンティーンが言いました。大統領もうれしそうにうなずきました。
 大統領の表情からは、自分が名付け親なんだから、もらえて当然。のような勝ち誇った気分も読み取れます。

 これを誰が風呂敷の中に入れたのかは、このお話のこれからの展開に関係あるかどうか分かりません。
 しかしこのパンダの赤ちゃんは、二人が奈落の網に落ちて、シマオがその網にこの風呂敷包みを投げ込んだときに、既に入っていたようにも思われます。

 なんだか不気味な感じもしますが、とりあえず二人はとても喜んでいるようですので、これでよしとしましょうか。
 実際、このパンダの赤ちゃんは、とてもあどけない素直な顔をしており、見るものの顔をほころばせるようなかわいいパンダです。

 それでその愛くるしい赤ちゃんに、マーライアンも気付いたようです。
 こちらをチラ見しています。



登場するホテルやマーライアンは、似たような名前のアジアのホテル・名所と全く無関係です。


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ハネムーンと海外旅行気分がなせる業(わざ)  [WDS第一章-3]

 飽きずにパンダの赤ちゃんを交互に抱く大統領とパンティーン。
 とても楽しそうです。
 「ふり」とは言え、ハネムーンの途中ですもんね。
 そしてここは海外。気分も解放されているのでしょう。
 辺りの観光客ののんびりと楽しい雰囲気も相まって、ふたりはとてもステキな時間を過ごしています。

 そんな中、パンダの赤ちゃんをチラ見する海の中のマーライアンが、少しずつこちらに近づいてきているようです。
 彼は陸に近づくほどに体を縮ませて、遠近法のマジックとトリックを駆使して着実に近づいてきました。
 かなり無理をしているらしく、顔が真っ赤です。しかし、幸せな観光客たちには、それがライティングによるものと見えるのでしょう。
 そしてとうとう、誰も気付かないうちに彼は、二人がいる海に突き出した陸地まであと1メートルのところにまで、横を向いたままやってきました。

 そして、いまだかつてないぐらいに縮まって、限度を超えてしまった彼は、

 BANG!!

 という音と煙ともに元の大きさに戻りました。
 そして同時に、その目からは青いビームが発射されました。涙でしょうか?

「マーライアンが、そこにいる!」

 パンティーンが叫びました。
 観光客達は、慶び驚き、悲鳴を上げながら身を乗り出して彼を捕えようとしました。
 マーライアンはひょいひょいと身軽に彼らをかわし、半ばわざと海に落ちて喜んでいる者もいます。

 そして、目からビームを出しっぱなしのままこちらを振り返り、赤ちゃんパンダのパンティーンが照らされだしました。
 それと同時に、海を超えたずっと向こうの岸でたくさんの花火が上がりました。
 マーライアンは、

「お、おめでと。ステキなお名前です、ではまたっ」 パン パンパン!(花火)

 と言って、海の中を滑るように元の位置に戻っていきました。
 鮮やかな花火は浴衣を来た大統領とパンティーンと、そして赤ちゃんパンダのパンティーンを照らし出しました。
(パンティーンは花火大会に着るような花柄で紺色の浴衣、大統領は温泉旅館のような浴衣、パンダは裸です)

 いつもの定位置に収まったマーライアンは、何事も無かったかのように水を吹き始めました。
 それでも心なしか、体が揺れているようにも見えます。息をきらしているのでしょう。

 観光客達は、みな興奮気味に何か話し合っています。

「カレ、なんて言った?」 「もう一回来る?」

 などと話しています。
 携帯電話でどこかに連絡しているものもいました。家族や友達にこのことを伝えているのでしょう。あるいは通信社にかけているのでしょうか。

「そろそろホテルに行こう」

 とパンティーンが満足げに言って、二人はパークを出て、この都会的な港に沿った道を歩き出しました。
 赤ちゃんパンダの実物大ぬいぐるみを抱いた大統領は、

「なにこの楽しさ!」

 と言って笑いました。パンティーンも笑いました。

 今目の前で起こったマーライアンによる不思議な演出には、この長いお話全体において、何らの意味もないようです。
 ただ単に、この二人の、ハネムーン気分と海外旅行気分が引き起こしたイベントなのでした。

 そしてこの場面に至って、二人は動物園の陰鬱からほぼ完全に解放されたようです。



登場するホテルや“マーライアン”等は、似たような名前のアジアのホテル・名所・世界三大がっかりと全く無関係です。


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