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ここからスタート!!  [遊園地ひつじみらい]

遊園地ひつじみらい ~21歳のわたしへ~

わたしは、きっかけがあればメイクにも挑戦してみたいと思っているような、ちょっぴり女子心を持った男子です。
ある日、目の前に現れた羊に孤独なわたしは恋をし、友情を求め、そして羊は何も言わずに……。
ある年の梅雨入り間近に起こったノンフィクションは、ここからスタートです。

左側のサイドバーで、マイカテゴリー「遊園地ひつじみらい」を選ぶと読みやすいです。携帯電話では、トップページから選択できます。

読了まで1時間かからないと思います。
途中で「意味が分からない…」と感じた方は、あとがきを先に読んでください。

















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共通テーマ:日記・雑感

黒い傘  [遊園地ひつじみらい]

さて、わたしは突然に降り出した雨により入った路地裏の喫茶店で、ようやくブログ記事を書き終えました。
 →仙台の思い出(3) 仙台の思い出(4)
携帯電話で入力するのは大変な作業ですが、とにかく書き留めておけば、後で振り返って考え直すこともでき、なにより書くこと自体に楽しさがあります。

その割りにうまくならないけどな~

わたしは席を立ち、会計へと向かいました。
すると、カウンターの向こうでソーサーを一枚一枚磨いていたはずのマスターは、既にレジに立っていました。
そして、初めにいた客の老紳士はいつの間にか帰ったらしく、店内にはマスターとわたしだけでした。

コーヒーは450円で、これもずいぶん昔からこのままのように思えました。
初めて入ったこの喫茶店は、ここだけ全て時が止まっているかのようです。

支払いを終えたとき、マスターが、
「傘をお貸ししましょうか」
とわたしに言いました。
雨のことをすっかり忘れていたわたしが外を見ると、まだ小雨がしとしとと降っていました。
わたしは、買ったばかりの白いスニーカーをはいていました。

もし傘を借りると、また返しに来なければなりません。いつも通る道とはいえ、もう一度この昭和時代のような喫茶店に来るのはちょっと嫌だなと思いました。

大正時代も昭和時代も、わたしの心の中、素晴らしい時代に違いありません。
そして現に、その時代の雰囲気を残す浅草の「花やしきに行ってみたい」とこれまで何名かの友達を誘ってみたこともあります。
しかし、その提案は必ず受け入れられず、決して実現することなく、そして今、わたしには誘う友達もいないのです。

わたしは独りで花やしきに入場するべきでしょうか。
同じように、この喫茶店にもう一度来るべきでしょうか。

センチメンタルに浸ることができるのは、漠然ともの寂しげな気分ながら、実は心にわずかな余裕があるときであり、今のわたしには、この都会の片隅にひっそりと存在する取り残されたこの空間を楽しむことはできないのです。それは単に心の中だけの「感傷」ではなく、真の「孤独」なのです。

この小雨なら、濡れてもなんとかなるかも……。

しかし、わたしの横には既に、黒い傘を持ったマスターが立っていました。
わたしは傘を受け取り、お礼を言いました。
マスターは外への扉を引いて開けてくれ、わたしは傘を開きました。

黒い傘は、高級な傘が常にそうであるように、ボタン式ではなく、開くと印象より大きく広がりました。

「いつでもいいですよ」

とマスターは静かに微笑み、わたしは会釈して歩き出しました。
いつでもいい……しかし、返さなくてよい傘では決してありませんでした。


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早い外出  [遊園地ひつじみらい]

雨は夜も降り続けたようですが、翌朝にはすっかり晴れ上がり、そしてその週はずっと初夏の爽やかな気候のままでした。

そんな中、意味も無く「返すのは週末以降」と先送りされた玄関の傘立ての黒い傘だけが陰鬱で、それはいまだに濡れているかのようにも見えました。

そして日曜の朝、わたしは早く目覚め、とにかく今日はこの傘を返そうと決意したものの、おそらくあの喫茶店はまだ開いてはいない時間です。
わたしはトーストを一枚食べ、その後洗顔し、パソコンをつけようとしてそれが一か月以上前に壊れたままであることを思い出しました。
とにかく外へ……と、わたしは着替え始めました。

これはどうでもいいことですが、気分が締まらない日はブリーフをはくと、若干引き締まるものです。それはわたしにとって、中がふわふわしていて足を包み込むタイプのスニーカーをはくのと一緒で、お尻その他と共に気持ちがきゅっと引き締まるのです。少し暑いのも一緒ですが……。
とはいえ、しばらくトランクスしかはかなかったわたしは、衣装ケースの奥からようやく一枚のブリーフを見つけ出し、それは色合い的には引き締まるどころか気が抜けるような代物ではありましたが、人に見られることもないのでジーンズの下にはきました。

スニーカーの紐を結びながら、あの喫茶店とこの傘のおかげで、この新しいスニーカーがほとんど濡れずに済んだという事実を頭の中で意識的に確認しました。
そして黒い傘を持ち、外に出ました。

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